シンポジウム『コロナ禍』におけるウエルネスライフ
新型コロナウイルス「COVID-19」は変異株の出現によって感染拡大の波が繰り返され、首都圏をはじめ各地でも緊急事態宣言が何度も発出される事態となっています。ワクチン接種の進展、社会全体での集団免疫の獲得、治療薬の開発などに期待が寄せられていますが、終息に至るのはどうやらもうしばらく先になりそうです。
今回の学会シンポジウムでは大会テーマ「『コロナ禍』におけるウエルネスライフ」をうけ、コロナ禍にあって、長く健康運動指導の現場に関わってこられた岡田真平さん、リモートでの授業や友達とも会えない日々が続いた学生たちに日々向き合っておられる水野暖果さん、そして学会の理事でもあり、長年終末医療に携わってこられた細井順さんから話題提供をいただきます。制限された社会生活や日常の中でどのようにウエルネスライフを実現していくか、会員のみなさんとともに考える機会にしたいと思います。 進行:西村仁志(学会副理事長・広島修道大学)
健康運動指導の現場から
岡田真平(公益財団法人身体教育医学研究所 所長)
コロナ禍の影響によって、それまで多くの人たちが当たり前に享受することができた健康運動・スポーツの実践や、人と人とが集って豊かな時間を過ごすことが困難になり、感染症とは別の健康課題、いわゆる健康二次被害の問題が生じました。引き続き感染予防策は講じる必要がある一方で、withコロナで工夫しながらウエルネスライフを送るための様々な試行錯誤も求められており、私自身が関わった内容を中心にご紹介します。
東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(教育学修士)。1999年4月長野県北御牧村(現:東御市)身体教育医学研究所研究主任。2005年4月同研究部長を経て2012年10月より研究所長に就任。公益財団法人運動器の健康・日本協会理事、社会福祉法人みまき福祉会理事、NPO法人日本健康運動指導士会長野県支部長他。主な研究テーマは「健康支援とスポーツ振興を通した地域づくり」。奈良県出身、長野県在住。
学生相談の現場から
水野暖果(広島工業大学 学生相談室カウンセラー・臨床心理士)
新型コロナウイルス感染症が拡大し、授業や就職活動のオンライン化、予定されていたイベントの中止など、大学生の生活も様々な影響を受けています。状況が日々変わっていく中で、本学学生相談室では、電話相談の活用や全学生・教職員を対象としたリーフレットの配付、教職員向け研修会の実施などに取り組んできました。今回は、こうした様々な取組をご紹介しつつ、コロナ禍におけるウエルネスライフについてカウンセラーの立場からお話したいと思います。
九州の自然豊かな町で育つ。大学では主に初等教育を学び、教員免許(小学校、中学校、高等学校)を取得。大学院(博士課程前期)では心理学を専攻。医療機関勤務を経て、2018年より現職。学生の個別面接、保護者や教職員との連携、障がい学生支援、学生相談室が主催する教職員向け研修会の運営等に携わる。学生一人ひとりに寄り添った支援を目指し、模索中。
わかれの現場からおもうこと
細井 順(ヴォーリズ記念病院ホスピス・学会理事)
コロナ禍により日常生活の様相が一変しました。私の仕事場であるホスピスの理念は「その人がその人らしい、人間としての尊厳を保って人生を全うすることを援助する」ことです。この一言を読み込むと、ホスピスはウエルネスライフの到達点を支えているとも思えます。コロナ禍では、人生を全うすることの難しさを覚えます。納得した意義のある日々を過ごして人生を終えるためには、ウエルネスの視点から、環境の変化に応じて価値観を見直し、一つひとつの出会いの質を高めていくことと考えています。
1951年生まれ。78年大阪医科大学卒業。自治医科大学消化器一般外科講師を経て、96年ホスピス医に転向した。淀川キリスト教病院ホスピスで学び、02年よりヴォーリズ記念病院に勤務。2004年腎がんで右腎摘出術を受けた。06年同病院にホスピス開設。13年ドキュメンタリー映画「いのちがいちばん輝く日〜あるホスピス病棟の40日〜」を劇場公開。20年胃GISTにて2度目のがん手術。自らの体験を顧みつつ、充実して幸福に生きること、死ぬことの伴走を務めている。2011年より日本ウエルネス学会員。